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京都市北区紫野今宮町69番地  ☎ 492−6852


あぶり餅が食べたくて今宮神社へ参拝した。

1・今宮神社拝殿に一和とかざり屋の提灯
今宮神社拝殿に献灯された”かざり屋”と”一和”の提灯

もとい、今宮神社は疫病除けのやすらい人形の奉納ができるし、この近くで生まれた徳川五代将軍綱吉の生母、桂昌院(通称、お玉)にあやかり玉の輿にのれるというご利益も盛んな霊験あらたかなる神社なのであった。

0・疫病除けの人形を奉納
今宮神社の自分の名前を書き奉納する”やすらい人形(ひとがた)”

そんな今宮神社へ参拝したご褒美にあぶり餅の“一文字屋和輔”こと“一和”に立ち寄った。

2・右に一文字屋 左 かざり屋
右が”一文字屋” 左が”かざり屋” 奥に今宮神社東門

当店でいただいた略伝によれば、

3・一文字屋
一文字屋の略伝表紙

一条天皇(在位 寛和2年−寛弘8年)の御代に疫病が蔓延。正歴5年(西暦994年)、今宮神社で御霊会を執り行うとひと時おさまったものの、長保2年(西暦1000年)に再び流行。そこで、今度は“やすらい祭”を当社で行なうと疫病がたちまち終息したという。

4・一文字屋略傳
阿ぶり餅の由来

その“やすらい祭“で神前に供えたられたものが、当寺、香隆寺(現在の上品蓮台寺)の名物である“おかちん(阿ぶり餅)”で、初代一文字屋和助が作り、今宮神社の神前に供えたのが、この一文字屋のあぶり餅の始まりであると伝えられている。

5・上品蓮台寺(香隆寺)
京の三大風葬地のひとつ蓮台野にある上品蓮台寺(昔の香隆寺)

都人は疫病を避けようと当社のご利益を求め、こぞって今宮神社へ参詣すると、そのあぶり餅を持ち帰り、家人に分与し疫病を逃れたのだという。

その後、千利休がこの餅を茶菓がわりに用い、爾来、千家の御用達となっているとのこと。

6・一文字・あぶり餅
炭火で焼かれた一文字屋のあぶり餅

そんな所縁を訊くとこのあぶり餅、たかが餅というのも畏れ多い千年の物語をもった何ともゆかしいお菓子なのである。

そのあぶり餅、疫病除けの御利益以外に、俗姓をお玉と呼ばれた桂昌院にあやかり玉のような餅を食べるとお玉(桂昌院)のように玉の輿にのれるご利益があるとのことで、とくに若い女性の間で人気がうなぎ上りになったとか。

00・お玉の井を横から
今宮神社境内に桂昌院から寄進された”お玉の井”が現存

そのご利益は、参道を挟んで店を構える“かざり屋”さんでもあぶり餅をいただけるので、どちらの店が御利益があるか試してみられるのも一興。

7・あぶり餅 かざりや
こちらは創業四百年のかざり屋

その“かざり屋”は創業は四百年前の寛永14年(1637年)にさかのぼるこれまた古い、ふる〜いお店である。

かざり屋・財規への玄関
かざり屋の座敷への玄関

この度、われわれが訪ねた“一文字屋”さんこと“一和”さんが、源氏物語が書き起こされた時代に産声を上げたという“初代一文字屋和助”のお店であった。

8・一文字屋・いち和の暖簾
創業千年の一文字屋こと一和の暖簾

わたしは10年ほど前に、参道をはさんで店を構える“かざり屋”さんでこのあぶり餅をいただいたが、家内は今を去ること四十年ほど前、花も恥じらうお年頃にこの一文字屋さんでいただいたのだという。

9・奥に座敷 手前は今も使用する井戸
一文字屋の奥に座敷席 手前は現在も使用される創業時からの井戸

巷間、「一文字屋さんとかざり屋さん、どっちがおいしい?」、「わたしはかざり屋」、「いやわたしは一文字屋」とかいうやり取りが結構、交わされているようだが、これはその人の好みですなというしかない。


わたしが10年前に食べたかざり屋の味と今回の一文字屋(いち和)の味を10年越しに比較するのもはなはだ非科学的なことは承知の上で申し上げるが、白味噌の甘みが勝っている一文字屋の方が今のわたしはおいしいと感じた。

10・甘い白味噌が香ばしいあぶり餅
甘い白味噌だれがおいしい

ただ、両店の味は一子相伝のものといわれているので、味が一応、不変であると仮定すると、この10年余で甘いものに異様な執着心をよせるようになったわたしが変わってしまい、甘みが少し強い一文字がおいしいと感じたということであろう。

11・今宮神社東門前に二軒のあぶり餅屋
参道をはさみ一文字屋(右)とかざり屋

京都通、あぶり餅通の友人にご意見をたまわると言下に、「エッ? かざり屋がおいしいでしょう」とのたまう。

家内は40余年前との比較のこととて、「どっちもおいしいんじゃない」と、大人の対応。

12・今宮神社出てすぐ
今宮神社東門から一文字屋とかざり屋を

まぁ、紫野今宮神社名物の阿ぶり餅、神社参詣の折には是非、立ち寄られたらいかがでしょうか。

13・右の石灯篭の先に一文字
今宮神社参道に一文字屋、かざり屋はある

一文字屋、かざり屋ともに一人前五百円で、値段は同じです。あぶり餅のハシゴをして、「わたし、やっぱり、かざり屋」、「一文字屋のあぶりは香ばしくって、超ウマ!」なんて、ちょっと京都通ぶってみるのもどうですか。