2014年11月21日の奇襲的な衆議院解散。12月2日に公示を受け、12月14日に施行された第47回総選挙は、自公の政権与党が全議席(475議席)の2/3(317議席)を上回る326議席を獲得する大勝利で終わった。

議事堂

大義なき解散とか税金の無駄遣いといった悲鳴のような声が野党側から挙がった今回の解散総選挙。


衆議院の2/3超という圧倒的議席数を誇っていた自公連立内閣が小渕経産大臣と松島法相のダブル辞任というスキャンダルにまみれ坂道を転がり落ちてゆく危機に直面、そのなかで勝負に出た解散・総選挙。


今回、解散を決断した時は、「自民は過半数確保、公明は現状維持、民主は伸び悩み」という情勢判断であったという。


自民党総裁室
自民党総裁室

内閣支持率をジリ貧に降下させてゆき、結果として政権交代という麻生内閣の悪夢を再来してはならぬというトラウマも今回の不意打ち解散の大きな要因であったと考える。


さらに、解散直前のサンプル調査では「自民は多くて30議席減、民主が85〜95議席で三桁に届かず」という数字。


そして、いよいよ14日の開票結果である。投票率は戦後これまでの最低であった2012年の前回衆院選を6・66%下回る52・66%(小選挙区)という低水準となった。


その投票結果を下の通りである。


         *( )内数字は(公示前議席比増減・前回選挙時獲得議席比増減)

自民党 291 (−2・−3)

公明党  35 (+4・+4)

民主党  73 (+11・+16)

維新会  41 (−1・−13)

共産党  21 (+13・+13)

次世代   2 (−17・+2)

みんな   0 (0・−18)

その他  12 (−12・−6)

合計数 475 (−4・−5)


総議席数 475 与党 326 野党 149  与党比率 68・6%

公示前時 479 与党 324 野党 155  与党比率 67・6%

前回選挙 480 与党 325 野党 155  与党比率 67・7%


上表の数字からその選挙結果が語るところをまとめてみた。


まず結論であるが、自公両党の獲得議席数は解散時比+2、前回選挙獲得議席数比+1と総議席が0増5減するなか絶対数を微増ながら増やし、与党比率という点でいえば公示前より1%アップの68・6%を占めるに至った。


逆に野党は解散時比、前回選挙獲得議席数比ともに−6議席と議員定数の削減の影響以上に議席数を減らした形となっている。


野党共闘という掛け声のもと小選挙区での野党一本化という画策もあったものの、結果を見る限り、その効果は限定的で、逆に野党同士のつぶし合い、足の引っ張り合いであったというのが今回の選挙結果の数字に表れているといえる。


すなわち、日本維新の会から分派した次世代の党がどう転んだか。

さらに、結の党への分派(衆院9)と最終的に解党に追い込まれたみんなの党(衆院9)の票がどこへ行ったか。


その議席合計37議席をどう野党で取り込めたかということであろう。


みんなの党からは維新と結いの党との合流で、9名が移動。


さらにみんなの党からは選挙前の駆け込み寺として民主へ3名。残りは無所属などでの選挙対応。


民主は他にも生活の党から2、新党大地から1、無所属から1の転籍があり、不意打ち解散の焼け太りで、みんなの党の3名を含め7名の議席増となっていた。


そうした野党の選挙前のドタバタを経て、臨んだ選挙。


結局、政策の摺り合わせなどを無視しての離合集散を重ねた野党陣営で、自民批判票の受け皿として国民の負託を受け得る党は出現しなかった。


そこで政権党になりうる政党としては認識されておらぬ日本共産党が、消極的な自民批判票の受け皿となった結果、13議席増と単独で議案提出が可能となる20議席を一議席超える21議席を獲得するという、いわば小さな漁夫の利を得た形となった。


こうして安倍総理も想定外の大勝利を得た国会であるが、今回の選挙でひとつ国民にとってひと筋ではあるが、今後の政治をわかり易くする道筋がほのかに見えてきたようにも思える。


左翼陣営から見てゆくと、社民・共産につづいて大きく左から右翼も包含する民主の右に、公明、維新、そして自民が並んだポリティカル・マップが見えてきた。


欲を言えば、自民の右に次世代のような自主憲法を掲げる20名程度の議員を抱える政党が必要であるが、この時点で多くを望むまい。


こうしたマップにおいて、今後、どうしても政党内外で整理してもらいたいのが、明確な政党綱領の改定、提示である。


民主党で言えば、たとえば集団的自衛権についての政党としての意見集約である。国の安全保障、現行憲法の扱いにおいて根幹となる国家観が決定的に異なる議員集団がひとつの政党の旗の下にいることが、この党の言うことが国民に信頼されない最大、致命的な欠陥である。


野党第一党がこういう一貫性を欠く主義主張のその場凌ぎの態度をとり続ける限り、せっかくのバブル政党の整理が進むなかで、自民党の対立軸の受け皿たる政党は出現しないというしかない。


是非、再来年の参議院選挙へ向けて真摯な政策協議を成し、明快な政党綱領を作り上げる作業に着手して欲しい。


対立軸はやはり護憲、改憲、自主憲法という国家観の相違点に着眼したものが国民にとってはわかり易い。


昨今、日々、周辺情勢が緊張度を増している国際情勢の真っただ中において、そうした視点、問題意識での政権選択を国民に可能とさせることが、いま、日本の政治家、政党に強く求められることである。


今回の選挙結果を糧に、そうしたクリアーな景色を見せて欲しいと切に願うところである。