文化の香り高い上野で鰻(うなぎ)の“亀屋・一睡亭”=上野・不忍池グルメ

上野の東京国立博物館・平成館において、現在、東京国立博物館の創設140周年を記念して、特別展『ボストン美術館・日本美術の至宝』が催されている。

ボストン美術館・日本美術の至宝
6月10日まで”ボストン美術館・日本美術の至宝”特別展を開催中

10万点を超える東洋の文化財のコレクションを誇り、“東洋美術の殿堂”とも称されるアメリカのボストン美術館が収蔵する日本美術の傑作92点が里帰りしてのお披露目ということになる。

国立博物館
国立博物館

展示された作品は仏像や曼荼羅などの仏画や平治物語や吉備大臣入唐を描いた大作絵巻、それに中世水墨画から近世絵画にいたるまでの傑作が一堂に展示されており、見応えのある特別展となっている。

平成館
特別展が開かれている平成館

なかでも特に印象に残ったのは、やはり今回の目玉の一つである曽我蕭白(そがしょうはく)の迫力ある“雲龍図”であった。

曽我蕭白・雲龍図
曽我蕭白の雲龍図(当館販売絵葉書より)

この雲龍図は、そもそも何枚もの襖絵に描かれていた雲龍図を襖から剥がし、いわゆる“めくり”の状態でボストン美術館で保存されていた。

しかし、1911年に同美術館で収蔵した時の状態はすでに絵具の剥離も多く、紙の損傷・劣化も進んでおり、お世辞にも保存状態がよいとは言えなかったとのこと。

6年前からその修復に取り組み、この度、りっぱな一幅の大画布に貼り直され、今回、世界で初めての公開となったものである。そして、このようにしてわれわれの目に触れることとなった。

ただ、この雲龍図をじっくり見ると分かるが、胴体部分の幾枚かの襖絵が抜け落ちている。その寸詰まりの姿が今にも飛びかかって来るような緊張感を醸し出し、かえって龍の迫力を増しているようにわたしには思えたから不思議だ。

胴体部分の襖絵は行方不明のままで、今もってその存在は不明とのこと。

長谷川等伯・龍虎図屏風
長谷川等伯の龍虎図屏風の龍(当館販売絵葉書より)

その曽我蕭白の雲龍図へ行きつく前に、長谷川等伯の“龍虎図屏風” がある。拝観者は最初にこの等伯の龍を目にすることになり、みんなそこでその筆の巧みさに「ほ〜っ」と感嘆の声を挙げるわけだが、ちょっと先に進み、蕭白の豪壮な“雲龍図”にぶつかり、頭を殴打されたように一瞬、息を呑むことになる。

それほどにその跳びかからんばかりの躍動感と龍の眼力に圧倒されるのである。

京都の相国寺の法堂天井の描かれた“蟠龍図(ばんりゅうず)”や妙心寺や東福寺の法堂天井から見下ろす“雲龍図”も、その堂内の薄暗さや森閑とした静寂さのなかで、ある霊感をともなう迫力を覚えたものだが、曽我蕭白の雲龍図には龍の荒い息遣いをそれこそすぐ身近に感じたのである。まさに雲龍図の傑作といってよい。

また、東大寺法華堂に飾られていた“根本曼荼羅図”にはちょっと複雑な気持ちを持った。まさに国宝級の文化財がどういう経緯か分からぬが、遠く海を渡り他国で収蔵されていることに、多分、時代の混乱の中でそうなったのだと納得しようとするのだが、国力のなさ故か痩せ細った精神故か、何しろ寂しくも哀しい、やるせない気持ちになったものである。

吉備大臣入唐絵巻
吉備大臣入唐絵巻(当館販売絵葉書より)
平治物語絵巻・三条殿夜討巻
平治物語絵巻・三条殿夜討の巻(当館販売絵葉書より)

また、24mにもおよぶ吉備大臣入唐絵巻を一挙に目に出来ることも驚きであった。平治物語絵巻もそうであったが、その保存状態は良く、平安・鎌倉時代の鮮やかな色遣いが美しく、見事であった。

弥勒菩薩立像
弥勒菩薩立像(当館販売絵葉書より)

快慶作の弥勒菩薩立像も、飛鳥白鳳時代の広隆寺・弥勒菩薩半跏像とは異なり、日本文化がその独自性を確立してゆく鎌倉時代という時代背景を想わせるどっしりとした安定感と快慶ならではの気品も窺わせる傑作であった。 


このほかにもまだまだ素晴らしい作品があるので、“百聞は一見に如かず”である。ぜひ、国立博物館へ足を運ばれることをお薦めする。東京国立博物館は610日までの公開である。わたしももう一度足を運ぼうと思っている。


また、その他の地域は以下の通りの公開予定となっている。

2012320()610() 東京国立博物館

2012623()917(月・祝) 2012929()129() 名古屋ボストン美術館

201311(火・祝)317()(予定)  九州国立博物館

201342()2013616()(予定) 大阪市立美術館