京都市左京区下鴨膳部町21

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下鴨神社の境内で今年140年ぶりに復元されたという「申餅(サルモチ)」を求めた。「はねず色」した可愛らしいお餅である。



「“はねず色”とは、明け方の一瞬、空面が薄あかね色に染まる様子で、命の生まれる瞬間を表すとされています。食べることで身体を清め、元気の気(け)をいただき、無事息災に過ごせるようにとお祈りした故事にならい、下鴨神社の申餅を140年ぶりに復元いたしました」と、宝泉堂の申餅の紹介状に記されている。



 

古来、葵祭の申の日には小豆の茹で汁で搗いたお餅を神前に供し無事息災を祈ったという。都人はこのほんのりと“はねず色”に輝くお餅を「葵祭りの申餅」と呼び親しんでいたのだそうだ。



 

実際に江戸時代の文献「出来斎京土産」に、下鴨神社の境内で「さるや」と看板をかかげた店が申餅を売る様子が描かれている。ところが、その慣わしも明治政府による因習排斥・文明開化の動きのなかで廃絶を余儀なくされたという。


今回ご紹介する「申餅(さるもち)」は、その故事に因んで代々の宮司に継承されてきた口伝に基づいて復元された和菓子である。葵祭の味をぜひ復活させたいと下鴨神社の新木直人宮司が神社近くの和菓子職人の古田泰久宝泉堂社長に依頼、140年ぶりに復元された。今年の葵祭から下鴨神社と宝泉堂で販売が開始されたばかりのなかなかに古式ゆかしい和菓子であった。


「加茂みたらし茶屋」のみたらし団子と併せて、無病息災を願う世の人たちにぜひお勧めの一品である。