政治資金規正法は、「同一の者に対する寄附の制限」について、5章「寄付等に関する制限」のなかの第222項において「個人のする政治活動に関する寄附は、各年中において、政党及び政治資金団体以外の同一の者に対しては、150万円を超えることができない」と規程している。

 

 そして、それに違反する者は「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する」との罰則が規程されている。

 

 要は、個人の政治家が指定する資金管理団体(鳩山首相の場合は資金管理団体「友愛政経懇話会がそれに該当)への個人A(実母=鳩山安子)の同一者(鳩山由紀夫首相)への寄付の限度額は、年間で150万円ということであり、それに違反する者(寄付した者・寄付を受けた者)には1年以下の禁錮または50万円以下の罰則が科されるということである。

 

 鳩山首相の実母は弟の邦夫氏にも同様に、同額の150万円を同氏の資金管理団体「新声会」へ寄付している(06年〜08年)ことも分かっている。

 

 その範囲内での政治献金であれば正当な政治活動に対する寄付であるので、何ら後ろ指を指される話ではない。しかし、今回の話は150万円などというちっぽけな(庶民にとっては大金だが・・・)話ではなく、今現在、明らかにされているだけで、月1500万円ずつ、年間で18千万円、5年間で何と9億円という目の玉の飛び出るような金が、鳩山兄弟の資金管理団体にそれぞれ提供されていたというのである。

 

 今回の図式はある意味、単純なものである。政治家と企業や業界団体との癒着といった問題ではなく、鳩山一族の財産分与問題であるという点である。そしてそのあり方に税の問題から見て、非常におかしいところが多いということである。

 

 はっきり言えばこうした定額で継続的に資金移動を行なうことは、資金管理団体を隠れ蓑に相続税逃れを確信的に行なっている気配がかなり濃厚であると言わざるを得ないのである。

 

1130日の参院本会議において、自民党の秋元司参院議員が鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金問題について、首相の実母からの多額の資金提供は贈与税支払いの対象であると指摘したことに対し、「仮に母親から資金提供があったとすれば、検察の解明を待ち、法に照らして適切な対応を取りたい」と首相は答えた。さらに「母親から何も聞いていなかったから『親族から資金提供はなかったと信じている』と言ってきた。納税義務を果たさなければならないのは当然のことだ」として、税法上の問題点が指摘されれば、修正申告などに応じるという。

 

 首相はこれまでも「すべて検察の捜査に任せている」とか「報道に大変驚いている。まったく私の知らないところで、何が行われていたのか。事実かどうかを含め大変驚いている。私はないと信じていたし、今でもないと信じていたい」と述べるなど、どこか第三者的で被害者面をして、洞ヶ峠を決め込んでいるように見える。

 

2002年3月、鳩山首相(当時、民主党代表)加藤紘一自民党元幹事長の元事務所代表の脱税事件について、こう放言した。「金庫番だった人の不祥事は、(政治家本人も)共同正犯だ。即、議員辞職すべきだ」と。

 

「友愛」政治の理念を説き、「透明性」を声高に述べ、国民目線の政治を行なうと「義の政治」を宣言する蔭で、こっそりと姑息な税金逃れ、それもとても国民目線では信じられぬ金額を行なう。

 

いや、「恵まれた環境にある」から年間1億8千万円程度のみみっちい小金など分かるはずがない、秘書と母親の間の話で自分は与り知らぬと開き直るのであれば、「友愛」の理念が泣くというものである。そして「透明性」などという目くらましの言葉など多用してもらいたくはない。

 

見つかったら税金払えばいいんでしょう、で、世の中収まると思ったら大甘もいいところである。ここは自民党もしっかりと追及の手を緩めず、元与党の意地を見せて欲しい。また検察庁も不起訴などと弱腰になることなくトコトン、事の詳細を明らかにして欲しい。

 

そして鳩山由紀夫首相には「政治家にとって言葉は命」であることを初心に帰り、問い直して欲しい。一度、口にした言葉は決して消えぬし、国民はそれを忘れない。加藤紘一議員の資金管理団体からの資金流用疑惑について「議員辞職を」とまで迫った鳩山議員である。そして、加藤紘一議員は政治不信の念を国民に抱かせたとして、そのとき、衆議院議員を辞職している。鳩山首相が洞ヶ峠を決め込むなどと考えているとすれば、彼の政治家としての言葉に命はないと、今後、国民は考えるだけである。