小泉の乱、Q.E.D(証明終了)!――郵政民営化の本質(下)

 

12日午後開催の「郵政民営化を堅持し推進する集い」における小泉元首相の発言から、永田町はにわかに風雲急を告げてきた。「郵政民営化に賛成ではなかった」に始まるここ数日の麻生総理の一連発言を受けて、昨年末に小泉・安倍元首相等郵政民営化推進派を中心に結成された議員連盟「郵政民営化を堅持し推進する集い」の開催を決定、そして当日の小泉発言である。

「郵政民営化の骨抜き」に発展しかねない見直し議論の浮上に、直近の派閥人事で降格の憂き目を見た中川秀直元幹事長や、最近とみに影の薄くなった小泉ファミリー等「改革派を自称する一派」が、その勢力復元を企図し、「郵政民営化命」の小泉元首相を引きずり出し、「小泉の怒り」を演出したというのが表面上の動きである。

しかし、事は魑魅魍魎(ちみもうりょう)の棲むという永田町で起こった話。そう単純な話で割り切れるものではない。「麻生おろし」といったお決まりの自民党内での権力闘争と見るのではあまりに早計に過ぎるし、それは人の良すぎる話である。

「小泉の乱」の真相はいったい何か? その解明をせねばならない。それでは、ラテン語でいうQ..D(Quod Erat Demonstrandum=証明終了)へ向けて説明開始としよう。

そもそも「郵政民営化」という政策課題が、日米政府間で毎年交換される「年次改革要望書」(正式名称「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」)において、その作成が開始された2001年当初から米国政府が要望項目に掲げていた事実をどれほどの日本人が知っていたであろうか。

その米国の意図については、当時、郵政民営化に反対を唱え小泉首相に反旗を翻した末、刺客(小池百合子元防衛大臣)に敗れた小林興起前衆議院議員のHPより、少し長くなるが引用したい。

「日本の郵政事業は、郵便料の赤字を補填する為、郵便以外に、郵貯・簡保を一緒にした3事業が一体で行われている特色があります。この為、税金を一切投入することなく郵政事業が成り立っています。アメリカにとっては日本国民が郵政公社に預けている350兆円が魅力であり、郵政民営化によってこの資金がアメリカに流れることを期待しているということが大きな背景としてあります(20054月「今月のひと言=国民にとっての郵政民営化」)」因みに郵政民営化を強要した米国において、ユニバーサル・サービス(全国何処でも均一料金)を基本とする郵便事業はなんと「国営」のままである。

このことは言葉を換えれば、われわれ日本国民は米国の国益追求のため、郵政民営化に熱狂・狂奔(きょうほん)し、国民の貯蓄350兆円を「どうぞ米国債の購入など自分の財布としてご自由にお使い下さい」と、米国に供出したと同じことになるのである。

小泉内閣が行なった「独占禁止法の強化と運用の厳密化」や「医療制度改革」など規制緩和という名の「改革」の多くは、「年次改革要望書」で米国から要求されていた項目であり、その実現は米国の保険業者などの日本進出を加速化させマーケットシェアを急拡大させる大きな力となったものである。

国民に熱狂的に支持された「小泉改革」が、実は米国の国益に沿ったものであったこと、誰のための改革であったのかをわれわれはよく認識しておかねばならない。大手メディアを巧妙に巻き込んだ情宣戦略で小泉内閣は、高支持率を維持した。そして郵政選挙で「ぶっ壊すはず」の自民党の衆議院議席を2/3以上確保、党勢回復を劇的に図ったことは周知である。

郵政民営化法案の通過により、350兆円と言われる国民の貯金をその後、米国債や米国の金融商品等の運用に向かわせる態勢が整った。米国にとっては長年の宿望がかないヤレヤレといったところであったろう。そして粛々と民営化(政府株式の放出)への手続きが進んでゆくはずであった。

そこへ「かんぽの宿のオリックスグループへの一括譲渡」疑惑が浮上した。鳩山総務相の横槍は、思いもかけなかった出来事だったのであろう・・・。米国にとっても・・・、そして改革利権の甘い汁を吸ってきた、またこれから吸えるはずの日本の一部企業群にとっても・・・。民営化人事も思い通りに行われ、事はまさに上首尾に運んでいたはずだったからである。