東京地検特捜部の狙いは一体、誰?

 

=キャノン工事関連の脱税事件

 

 

 210日、とうとうコンサルタント会社「大光」(本社・大分市)の社長、大賀規久容疑者(65)が、東京地検特捜部により逮捕された。逮捕容疑はキヤノンの関連施設工事をめぐる法人税法違反である。

 

 当初、この事件が報道されたとき、キャノンの工場建設にかかる工事受注会社である大手ゼネコン「鹿島」がコンサル業者を絡めて裏金作りをし、脱税を行なうという単純な図柄事件であるように見えた。

 

 しかし、その報道の当初よりふたつの違和感が実はこのわたしにはあった。

 

 ひとつは工事の発注者であり、資金の流れからして「出し手」である、「キャノン」がことあるごとにその社名を連呼され、テレビ映像もキャノンの本社ビルを映しだし、「キャノン」のロゴマークを大きく映し出す、その異様さであった。

 

 通常は工事受注に際して業者たる「鹿島」あるいはその斡旋に汗をかいたという「大光」の裏金作り、脱税事件ということで、「鹿島」と「大光」にフォーカスされたニュース報道がされるはずである。そうであるのに、なぜか「キャノン」のロゴが刷り込まれる報道であったのである。

 

 そして、もうひとつの大きな違和感は、天下の東京地検特捜部がこの事件を摘発したということであった。脱税という行為は個人法人を問わず重大な犯罪ではあるが、東京地検の特捜部がなんでまた?という気がしたのである。「鹿島」には失礼だが? コンサル会社「大光」においては問題外で、どう考えてもそうした名前で、東京地検特捜部が出動するはずがない・・・。権力の中枢かそのすぐ周辺に息をひそめる人物・組織に狙いを定めているのに違いないと、考えるのが普通である。

 

 こうして、御手洗冨士夫経団連会長(現キャノン会長)と「大光」社長大賀規久容疑者との関係がオオキククローズアップされて来た。さらに御手洗会長の親類である、「大光」の元取締役で元大分県議会議長であった長田助勝容疑者(80)も同時に逮捕された。

 

何のことはない、「キャノン」のロゴが報道当初からテレビ画面に踊ったのは、こういう伏線があったわけである。警視庁の記者クラブ(七社会・警視庁記者倶楽部・ニュース記者会)の面々は、とうにこうした事情を知っていたのだろう。

 

 しかし、「キャノン」の問題もふくめ、「鹿島」の裏金が一体どこに向かったのか。その先、いやもっと先にこの事件の本当の忌まわしい正体が見えてくるのだろう。単に経団連会長の御手洗氏を狙った特捜部の動きとはどうしても思えぬのである。

 

東京地検特捜部が動いたからには、その正体について相当程度の確証を得ているに違いない。外堀をしっかりと埋めた後だからこそ、こうして世の中ににぶち上げたのだと信じたいのである。もはや財界総理と言われた時代の経団連会長のステータスはない、今の時代に、こう言っては何だが、御手洗氏ごときで特捜部が動くとは、悲しいことながらどうしても思えぬのである。

 

「キャノン」のロゴの裏にひそむ巨悪の正体とは、いったい何者なのだろうか? 郵政民営化にからむ「かんぽの宿」のオリックス不動産への一括売却疑惑など、小泉政権時代の「改革なくして成長なし」に国民が踊らされ、何らかの意図をもって率先してそのお先棒を担いだ人たちには、何か胡散臭いにおいがつきまとって仕方がないというのが、このキャノン事件で連想ゲームのように思い浮かんできたことごとなのである。

 

 小泉政権時代の拙速過激の「改革」に関連した、経済界なぞにとどまらぬ政界(元政界もふくむ)、官界を巻き込む大疑獄事件へと進展してゆくのだろうか・・・。いまわたしは残念ながら、この不吉な予感が的中しそうな気がしてならないのである。