この国の民主主義は危険水域へ

=政治に対する関心、言葉を失うという危機

   最近、政治への関心が急速に失せ、無力感のみ感じる自分がいることに気付き、空恐ろしくなる。この国の政治に「何か」を求めることなどそもそも無意味なのだといった虚無感にすら襲われる。だからTVの報道番組もNHKのニュースをチェックする程度で、とくに民放の情報番組などは、したり顔のキャスターや不勉強なコメンテーターの存在が不快でほとんど見ることもなくなった。

 

 それほどにこの国の政治はかつてないほどに活力を失い、それを厳しく監視すべきメディアの質の劣化も著しく、したがって政治そのものにとどまらず、それをチェックするメディアにすら関心も薄れ、魅力もなくなった。主権者たる国民のひとりであるはずのわたしは、最近の自分の気持ちの枯れ枯れとして荒涼とした心象風景に、ある種の懼(おそ)れを覚える。こうした国民の気持ちの間隙をぬって「ファシズム」というファントム待望論がいつしか人々の心を熱く占有してゆくことになる・・・というおぞましい近過去の歴史・・・。

 

麻生太郎首相と小沢一郎民主党党首の党首討論(1128日)を終えた29日、30日の両日にわたり、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)合同での内閣支持率等の世論調査が行なわれ(全国の有権者1,000人への電話調査)、その結果が公表された。電話調査(RDD法)による世論調査の問題点は別の稿に譲るとして、ここではアキバが産んだ麻生内閣の支持率急落について政治に信を失った者の「言の葉」を書き記そう。

 

麻生内閣発足直後の925日の同世論調査では、内閣支持率は446%であったが、今回は275%へと大きく落ち込んだ。また、「麻生、小沢どちらが首相にふさわしいか」との質問に対しては、初めて小沢一郎が32.5%と、わずかに1%ではあるが麻生太郎首相(31.5%)を上回った。

 

 このところの麻生首相は、定額給付金についての迷走や道路財源一般化に関わる1兆円の地方交付税・交付金問題、さらには第二次補正予算の今国会提出の見送りなど「政局より政策」と強く訴えてきた総理自身が、政策面で大きなブレを見せ、リーダーシップを失っている。

 

 百年に一度、未曾有(麻生読みでは「みぞゆう」)の危機に世界経済が直面している。だから国民生活を防衛する意味から早急に大型の景気対策を打たねばならぬ。そのため小沢党首がいう解散・総選挙といった悠長な政治空白を作ることは許されぬ。

 

 麻生首相はそう言っていた。わたしもそう考えたから、麻生内閣の緊急経済対策の取りまとめに期待した。「財政再建」原理主義派の硬直した頭では考えつかない柔軟な思考で、生きた経済を活性化させる大胆な景気対策が、今国会中に打ち出されると当然、思っていた。未曾有(みぞう)の事態なのだから・・・。

 

 しかし結果は違った。だから、わたしはいまの「政治」を語ることの愚かしさに打ちのめされた。そして虚脱感に襲われている。

 

 民主政治の理念では国民の審判を経ていない政権は、正統性を有さぬことは明らかである。自民・公明両党は国民の審判を受けぬまま、いわば認知されぬ政権を安倍・福田・麻生と、事もあろうに三代も続けて擁立してきた。それじゃ今度は民主党が政権党?に、でも政権担当能力は果たしてあるのか、あんなに国民の耳障りのよいことばかり言って・・・。

 

 そうしたことをあれやこれや考えているうちに、この国はほんとうに一度、どんぞこまで転落するしかなのではないかと思うようになるのである。そう、ガラガラポンすればいいのだと。だが、国を「ガラガラポン」するって、それってまさか革命ってこと?・・・、そんなことがこの「ゆるキャラ」の国で起きうるかい?

ましてや健全な批判機能を果たせぬメディアが、権力を正当に評価・批判できぬメディアが跋扈(ばっこ)する国で、そんな大それた「ガラガラポン」なんてこと、危なっかしくて、とてもとても・・・。だけど、このままじゃ・・・。

 

そんな繰り返される夢想・・・、そう、いまの自分は危険な思考回路に入っていっているのだと気付き、ふと空恐ろしくなる。そして、また考え出してしまう。

 

・・・失業者が巷にあふれ、国民生活が食糧危機やエネルギー危機に襲われ、日常の糊口(ここう)も漱(すす)げぬ困窮生活に現実に直面しなければ、もうこの国の変革は望めぬのではと・・・。そして果断な独裁者でも出現して来ないことには何も変えられぬと・・・、みんなが熱病患者のように考え出す・・・。

 

 ほんとうに今のこの国は、考える意志も、行動する決意も失った、魂のない抜け殻のような人間の群を置くただの地面になり果ててしまったのだと。将来に夢の欠片すら持てぬわたしはそう考え込んではますます滅入り、この国の深くて暗い深淵を覗き込むのみである。主権者たる自分が、本当に危険な心理状態に陥っている、そう思うとゾッとするのである。この国の民主主義は危険水域に入っているのではないのかと感じるのは、心配症で臆病なこのわたしだけなのだろうか。

 

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