イタリア料理のファミレス・チェーン「サイゼリヤ」のピザ生地から現在、中国国内外で問題となっているメラミンが検出された。1021日に正垣泰彦社長は日本国内で行なっていた検査結果を待たずにピザ販売を続けたことの釈明会見を行なった。


そのなかで、「中国の検査ではメラミンは検出されなかったので、結果を信用していた」、「メラミンの混入は全く想定外だった。対応が後手後手になったことをおわびします」と述べ、謝罪した。

 

20071月に発覚した不二家の消費期限切れ牛乳等による洋菓子製造問題で、「食の安全」に対する国民の関心は弥(いや)増しに高まった。その後も懲りることなくミートホープ、白い恋人、赤福、比内地鶏、吉兆、マクドナルド、ローソン、崎陽軒など食品および関連業界において産地偽装や賞味期限の改ざん事件が続出した。「食の安全」の信頼を大きく揺るがす事件がまぁ湯水のごとく出るわ、出るわ、本当にこの国は一体全体、どうなったのかと慨嘆しきりであった。

 

そして一息つく間もなく、三笠フーズ・浅井の汚染事故米の転売問題で酒造業界や菓子業界がテンヤワンヤの状態。消費者の食への信頼はトンと地に落ちた。「商人道徳」「商人道」などという言葉はとうに死語となったと言ってよい。

 

このように我が国の国内メーカーや料亭、商社における「食の安全」に対する背信行為が大きくクローズアップされる一方、時を同じくするように高度成長を続ける中国で生産された冷凍製品にも安全面での問題が生じた。20081月の有機リン系殺虫剤が混入した冷凍餃子に始まり、その解明もなされぬうちに、この10月にはジクロルボス混入の冷凍いんげん事件が発生した。この二つは製造管理の問題なのか、犯罪性のある事件なのかまだ解明されていないため、軽々に憶測で物を言うべきではないが、9月に中国国内で発覚したメラミン入りの粉ミルクによる乳幼児の健康被害事件はまさに食品メーカーの確信的犯罪であり、当然のこと国内外で大きな社会問題となっている。

 

そうしたなかでの「サイゼリヤ」のメラミン入りピザ騒動である。冒頭に記した正垣泰彦社長の言には「食の安全」への信頼の揺らぎ、いや、危機に対する問題意識のひとかけらも感じられない。食品業界にある人間にあるまじき意識の低さであり、正直、驚きを隠せない。正垣社長は、言うまでもなくお客様の口に入れる食品を日々、サーブする企業の経営者である。こうした時代「一寸待て、安全を確認してからでないとお客様の前には提供できぬ」と考え、疑わしきものの検証を指示・徹底させるのは、経営者としては最低、最小限の責任・義務である。

 

この時期、「メラミンの混入は全く想定外だった」と平気で「想定外」に口にできる人間が食品関連業界に存在することなど、決して許されることではない。メラミン混入濃度が安全基準よりも低かったということで、同社長がこの程度のことでは健康被害にはつながらぬと高をくくっているとしたらとんでもない勘違いである。消費者の安全を後回しにするような企業は、即刻、この業界から退出すべきである。今回引き起こした事件はそれほど重い意味を持ったものなのだということが、どうもこのご仁にはよく分かっていないように思えてならない。

 

 「サイゼリヤ」はイタリア語の古語で「くちなしの花」のことだそうだ。命名は当社の創業日の77日の誕生花「くちなし」に由来するという。その花言葉は「わたしは幸せです」と、当社のHPに書かれていた。この「わたし」とは「正垣泰彦社長」のことを意味していたのだと、今回、初めて知ったところである。