温暖化防止国際会議=POST−KYOTOで評判の悪い日本(下)

上につづく)要は初めて数量目標を規定した京都議定書の名誉ある取りまとめ国が2013年以降の新たな国際協定(ポスト京都)づくりに向け、何ら具体策も提示せぬその後退とも取れる姿勢を国際社会が大きな問題として取り上げているのである。

 

欧州連合(EU・27カ国)はこの3月のブリュッセル首脳会議で京都議定書後(12年以降)を想定して2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で20%(米国が参加すれば30%)削減することで合意した。そしてその首脳会議の議長国であったドイツ政府COP13にタイミングを合わせる形でこの5日、2020年までに同国の温室効果ガス排出を90年比で最大40%削減するという大幅な削減目標を定め、その関連法案や通達をまとめたエネルギー・環境包括案を閣議決定したと発表した。まさに21世紀の国際社会の最大テーマと言ってもよい環境問題においてリーダーシップを握ろうとしている。

 

 さらに京都議定書の埒外(らちがい)にいた世界第二位の排出国である中国が「ポスト京都」をめぐる交渉において、既に各国に提案している案とは別に、2009年までにすべての交渉を終えるべきだとの前向きな案を別途、用意していることが6日に報じられた。発展途上国として削減目標を課せられていない中国が現在の国際政治環境を天秤にかけて温暖化防止への積極的姿勢への転換を示そうとしている。まさに国際政治の流れを見据えた戦略的な動きと言える。

 

 そして日本がその立場を必要以上に配慮している米国においても、とうとうこの5日、上院の環境公共事業委員会が二酸化炭素など温室効果ガスの排出削減を義務付ける超党派の法案を賛成11、反対8で可決するなど、地球温暖化防止に対して初日の豪州の京都議定書批准表明に始まったCOP13の場は、日を追うにつれ、さながら国際社会の一員たる証明の証としての「決意表明合戦」の様相を呈してきたといっても過言ではない。

 

 そうした国際政治の駆け引きのなかで、10年前に名誉ある京都議定書をまとめあげた日本は、何ら決意表明をするわけでもなく、逆に地球環境保護に対する覚悟の後退と温暖化防止活動に対するイニシアチブの喪失を国際社会に強く印象づける格好となっているのである。

 

わが国は昨年の830日付で第1約束期間(20082012年)の京都議定書に準拠した日本の温室効果ガス排出割当量をCO換算で592900万トン(=126100万トン(1990年基準年度排出量)×0.94(基準年度より6%マイナスが日本の目標値)×5年)とする報告書を気候変動枠組条約事務局に提出している。

 

 わが国の直近の2006年度の温室効果ガス排出量の速報値は134100万トンである。単純に5倍すれば67億トンとなる計算であり、京都議定書で議長国として約束した59億トンを大きく上回る排出量となる。その超過した分は今後の産業界等のさらなる削減努力や森林資源吸収対策と排出権購入という札束で帳尻を合わせる算段である。

 

 このように第一約束期間の対策ですら四苦八苦している国が、POSTKYOTOであらたな枠組みを国際社会に提案できるなどと思う方がちゃんちゃら可笑しなことであるのかも知れぬ。またそう考えてくれば、メディアがクール・ビズをはやし立て悦に入り、防衛省疑惑で環境問題どころでないこの国がCOP13で評判が悪いというのはますます当然と言えば当然のことなのだと得心のゆく話ではある。そして国際社会で「決意表明」などと大それたことなどとても現在の国内政治状況ではできるはずがないことも十分過ぎるほどに、納得がゆくのである。