繰り返される誤審、国内競技連盟の国際化を急げ!

 

 国際レスリング連盟(FILA)主催の2007年世界レスリング選手権が9月17日から23日の一週間にわたり旧ソビエト連邦内に位置するアゼルバイジャン共和国のバクー市で開催された。

 

その最終日の23日、女子72キロ級において日本代表の浜口京子選手が昨年の金メダリストであるズラテバ(ブルガリア)選手と2回戦で対戦したが、また誤審と思われる判定で、いや100%誤審によって敗れ去ることとなった。

 

この女子レスリングの誤審は、つい10日ほど前にリオデジャネイロ市で開催された国際柔道連盟(IJF)主催の世界柔道選手権大会の男子重量級において日本の井上康生と鈴木桂治両選手が誤審と思われる判定で、早々と二回戦で姿を消したことにつづき、日本スポーツ界の指導層および運営団体すなわち国内競技連盟の国際舞台でのネゴシエーション力不足が半端でなく深刻なことを裏付ける結果となった。

 

今回は柔道選手権のときのビデオによる試合中の再審チェックもなく、競技途中の日本コーチ団の抗議も日本語でまくしたてるだけで効果はなく、その判定が覆ることはなかった。

 

 試合が終了した後にようやく日本レスリング協会の福田富昭会長が当該ビデオをマリオ・サレトニグFILA審判委員長に見せることになった。そして同審判員長が「浜口のポイントである。(判定は)100パーセントのミステーク」と断言したという。しかし、試合が終了した後の判定修正はありえず、日本チームは苦渋の涙を呑まされる結果となった。

 

実際に当時のTV中継を見ても、解説者は浜口選手が技をかけた際に、得点をあげたと自然に気負うことなく解説していた。その直後に相手のズラテバに3ポイントが入り、「えっ!どうして?」と何が起きたのかわからぬまま生煮えの状態のなか、試合は敗退を喫することとなった。

 

ズラテバ選手は昨年の同大会決勝戦で敗れた浜口選手の因縁の相手である。その決勝戦は相手の頭突きにより鼻をへし折られ、状態が不完全のまま敗退したのである。そしてそのことで全治1カ月の手術を受け、本格的トレーニングへの復帰が遅れた経緯がある。それに対し日本レスリング協会は「故意の頭突き」とした抗議文をFILAに送付したというが、何かルールなりが変わったわけでもなく、その対応はおざなりで負け犬の遠吠えであったと言ってよい。選手の歯ぎしりするほどの悔しさが本当に身にしみてわかっているのか、疑いたくなるのである。

 

世界大会でつづくこうした誤審騒動による日本選手の敗退を見るにつけ、試合後に茫然自失となり涙をこぼす選手たちにその責がないことは明らかである。

 

一方で、日本女子の快進撃がつづくレスリングにおいても、スキージャンプ競技や複合競技同様の日本選手に不利なルール改訂が2005年の1月から認められてしまったという。国際競技連盟でのディベート力や政治的根回しのあり方、わが国選手が実力のある国際連盟における日本包囲網への情報収集力の強化等早急に図る必要がある。そしてより現場に密着している監督やコーチ陣の試合会場におけるジャッジに対する実効性ある抗議のあり方についても、当面の対処策ではあるかも知れないが、外人コーチの採用なども含めて真剣に対策を講じるべきであろう。

 

また中長期的観点からは、コーチ陣や将来の競技連盟を背負って立つ若手層を同スポーツに限ることなく各種国際機関へ留学させ、国際感覚や国際間の駆け引きを身につけさせることなども、一つの有効な手段として検討してみる価値はあるのではなかろうか。さらにその逆に日本の競技連盟に外国人を迎え入れることなども国際化、開かれた連盟となる方策として試みてもよいのかも知れぬ。

 

井の中の蛙的な連盟内でのつまらぬ権力闘争や派閥抗争などにうつつをぬかす時間などないことを連盟の役員陣は肝に銘ずるべきである。不甲斐無い競技連盟の指導者層のしわ寄せが、私的時間を犠牲にして練習に没頭する選手たちに納得のゆかぬ敗戦という形で向かうのでは、あまりにも申し訳が立たぬではないか。そしてそれはあまりにも理不尽と言うものではなかろうか。