「新聞の独禁法特殊指定と再販制度の時代錯誤」

 

再販制度は「再販売価格維持制度」を略したもので、製造業者が小売店と定価販売(小売価格の維持)の契約を結ぶことができる制度。独占禁止法では原則的に禁じられている行為だが、新聞や書籍などの著作物については適用除外として認められている。ただ、再販制度はあくまで民間業者間の取り決めとして位置づけられている。

一方、特殊指定は公正取引委員会が独禁法に基づいて行う告示で、新聞については発行本社、販売店双方に定価の割引や割引販売を禁じ、違反した場合は独禁法に問われる。このため、再販制度と特殊指定が一対の関係となって、新聞の定価販売、さらには宅配制度が維持されてきた経緯がある。(毎日新聞 200632日 東京朝刊)

 

公取委は昨年11月に今年6月を目処に、「新聞業の特殊指定」の撤廃を含めた見直す方針を発表した。そして、これを受けた形で日本新聞協会はこの3月15日に「特殊指定堅持を求める特別決議」を採択、世に発表した。

 

これまでもこの再販問題と特殊指定問題は長々と議論がなされ、その都度、絶大な権力を誇る「ペンの力」によってその廃止が阻止されてきた。新聞は常々、規制緩和を声高々と謳っている。競争原理が働く市場で競争力のない企業は淘汰され、結果として各業界の力を増し、国民に対するサービスの質も高まるのだと。

 

この理屈が何故、新聞業には当てはまらないのか浅学非才の私には理解できない。

 

決議は「特殊指定の見直しは、特殊指定と一体である再販制度を骨抜きにする。販売店の価格競争は戸別配達網を崩壊に向かわせる」、「その結果、多様な新聞を選択できるという読者・国民の機会均等を失わせることにつながる」と主張する。

また、北村日本新聞協会長は「他の物品と同じように価格競争にさらし、生き残るものだけが残ればいいというものではない」と新聞が果たしている公共的な役割を強調したと云う。加えて、日本新聞販売協会もそのコメントに併せるように、「戸別配達制度は新聞社、販売店が一体となって長年にわたって築き上げてきたもので、多くの読者は制度の継続を望んでいる。特殊指定の改廃は、戸別配達制度の崩壊を招く」との中畦会長の談話を発表した。

 

新聞協会並びに販売協会のこの牽強付会な主張に私は、新聞業界の「思い上がり」と「人に厳しく自分に甘い」そのご都合主義に唖然とし、開いた口がふさがらない。多様な新聞を選択する国民の機会均等を失わせる多くの読者は制度の継続を望んでいるとは、一体、どういうところから出てきた事実認識、時代感覚なのであろうか?これだけTVや携帯・パソコンを初めとするネット社会が広まっている時代にである。

 

ニュースの鮮度で云えば、即時性の観点からTV、ネットに紙情報が勝てるわけはない。さらに、麗々しく謳われる「他の物品と同じように価格競争にさらし、生き残るものだけが残ればいいというものではない」という新聞は愚かなる国民に文化と教養を普及・指導させているとでも云いたげな一種の選民意識はかつて新聞が事大主義的な権力に向って牙を剥く時に最も忌み嫌った意識だったのではなかったか。その俗臭芬々たるご都合主義にはほとほと嫌気がさすし、もうそろそろ新聞の宅配自体を断るべき時期がきたなと感じる次第である。あの、販売員の強引で恐喝に近い販促の実態を体験すると、尚更にその感を強くする。

 

私は新聞の宅配制度がなくなるからといって、自分の教養・文化程度が低下していくなどとは寸分も思ったことはないし、そのような危惧すら抱いたこともない。反って、己の主張を通すためある意図すら感じる捏造にも似た強引な記事を目にしないですむだけ、冷静な判断ができると思っている。