「カーリング チーム青森――1」

 

 トリノの勝者は荒川静香とカーリング競技であったと云ってよい。片や冬季オリンピックの花である華やかなフィギュアスケートにおいての金メダル、片や地味でルールすら知らなかったカーリングと云う競技で出場数たった十チーム中での七位。カーリング競技に対すると云うよりカーリング娘に対する日本人の熱狂振りを見て、人生とはつくづく不思議なもので面白さのつきぬ予測不能な代物だと改めて考えさせられた。そして、「ドラマは予期せぬからこそドラマたりうる」と云う当たり前のことに気づかされた。

 

 チーム青森のメンバーにとってトリノから戻っての日々は、嬉しさの中にも戸惑いを隠しきれていないのが一目して分かる。三月八日から青森市カーリングホールで開催されている全日本選手権女子の大会は報道陣、全国から詰めかけたファンで、その過熱振りは異様さを増しており、彼女たちの戸惑いはピークに達しているのではなかろうか。市井の素人娘が一夜にして日本中の注目を浴びる存在になったのである。その精神的緊張感も半端ではないと察せられる。

 

 トリノオリンピックのカーリング競技の結果は、金メダル獲得国がスウェーデン、銀がスイス、銅メダルがカナダとなった。日本におけるドラマは二月十八日土曜日夕方のカナダ戦、十九日日曜日早暁のスウェーデン戦から始まった。それまで一勝三敗と成績不振で迎えた強豪カナダ戦。誰も期待などしなかった。たまたま土曜日の夕方からゴールデンタイムにNHK衛星第一で実況生中継が流された。トリノでの最初のドラマの幕開けであった。土曜日の家庭団欒のなかで、ついついカーリングと云うルールすら分からぬ競技に引き摺り込まれていった家庭が多かったのではなかろうか。私は遠いイタリアのトリノから届く熱気のようなものを映像を通して確かに感じ取った。そして、信じられぬことに何と五対二でカナダに勝利してしまったのである。そして同日の続く試合(日本時間十九日午前二時五十五分実況放映開始)でこれまた強豪のスウェーデンとの激闘。結果は七対八と延長戦のうえの敗退であったが、この死闘が私の眠さも忘れた気持ちに火をつけた。それまでモーグル、ハーフパイプ、スピードスケートでメディアが持ち上げるだけ持ち上げておいての無様な敗退に私はオリンピックそのもに興味を失いつつあった。さらに情けないことに代表も送れないとコメントしていたはずのジャンプまで最後にはメダル獲得の夢を賭けざるを得ない状況にメディアもJOCも追い込まれていた。

 

 メディアは事前の取材でメダル候補競技については、メダル獲得と同時に流せるように「メダルへの苦難の道のり」と云ったタイトルの番組が相当数準備されていたはずである。単独インタビューあるいは涙の映像と云ったドキュメンタリーの名の元に予め作成された想定どおりのドラマを用意していたはずである。しかし競技日程が消化されていくにつれ、TV局が「想定内」で満を持して用意していた作り物の感動は日の目を見ずに次々とお蔵入りを余儀なくされていったに違いない。