似非学者中谷巌とNHKのお粗末さ
中谷巌氏はかつて市場原理主義を標榜し、小渕内閣(1998/7-2000/4)時代の首相諮問機関である「経済戦略会議」の議長代理を務めたほか政府の委員を多く務め、諸々の規制緩和を行なうにおいて学者・有識者として政府にお墨付きを与える役割を果たし、大きな影響力を持った人物である。
その人物を1月29日の午後9時のNHKニュースがとりあげた。中谷巌という経済学者が、かつての自説は間違いであったとして懺悔の書を出版したという「間違いを認める潔さ」を称賛するような内容であった。わたしはこのニュースに接し、冷静さを失い、憤りを覚えてこの文章をしたためている。
中谷巌氏は、1994年に『経済改革のビジョン 「平岩レポート」を超えて』(東洋経済新報社)を大田弘子氏(当時大阪経済大学助教授・元経済財政政策担当大臣)とともに著し、市場原理主義を徹底的に推進することを謳ったのである。
わたしは学者として未だ存在していることすら許せぬと考えているその男が恥も外聞もなく、何の衒(てら)いもなくテレビに顔を出したことに驚きを隠せなかった。己の犯した過ちが、国民を塗炭の苦しみに陥らせていることに、本当に自戒の念を覚え、断腸の思いであるのであれば、本来、学者という肩書、活動すら止めて、隠遁でもするのが筋ではないのか、そう思っているからである。
それが、こともあろうに公共放送NHKに出演。あ〜ぁ!天を仰ぐしかない。
この男はいま、「『資本主義はなぜ自壊したのか〜「日本」再生への提言』(集英社、2008年、まえがき)や『小泉改革の大罪と日本の不幸 格差社会、無差別殺人─すべての元凶は「市場原理」だ』(『週刊現代』12月27日・01月03日号、2008年12月15日発売)の中で、過去に自分が行っていた言動(アメリカ流の新自由主義や市場原理主義、グローバル資本主義に対する礼賛言動、構造改革推進発言など)を自己批判し、180度転向したことを宣言した上で、小泉純一郎の行った構造改革を批判している。」(Wikipedia)のだそうだ。
あんたが言った事でこんな結果になったんだよ。「資本主義はなぜ崩壊したのか」の印税は、当然、派遣切りや中小企業の資金繰りのために拠出するのでしょうね。そうでもしなきゃ〜、わたしの腹の虫は治まらぬ、いや、世間、いやお天道さまも許しゃ〜しない。
本当に、今夜、したり顔のあんたの顔さえ見なければここまで激昂することもなかったんだけれどもね。・・・
まぁ、そのことを、こともあろうに公共放送のNHKが、さも過ちを潔く認め自己批判した見識ある人物のように報道したことに、無性に腹が立ったのさ!
「(市場原理主義の徹底による規制緩和の推進の結果)格差がここまでくるとは考えられなかった。学者として不勉強であった」といった趣旨のことを、いけしゃ〜しゃ〜とTVで述べたこの男の厚顔無恥、無節操さを目にして、怒髪天を衝く心理状態になったってわけ。
その当時、分野を問わず規制緩和を推し進めることの恐ろしさは、政治的無欲な経済学者、いや一般社会人ですら分かっていた。わたしもメディアの人間に行き過ぎた市場原理主義は危険であることを、事あるごとに訴えたものである。
現在問題となっている医療や年金、福祉といった社会保障制度におけるセーフティーネットの綻びも、言って見れば、中谷巌、竹中平蔵、大田弘子、宮内義彦といった規制緩和推進論者、換言すれば拝金主義者が、そうした分野(競争原理にそぐわぬ分野)にまで強硬に推し進めた結果であると言ってよい。
その元凶たちは中谷氏を始めとして今もって、ゆうゆうと生き伸びている。もちろん、派遣切りなどされず、社会的地位は盤石である。
ただ、公共放送が何の評価軸、見識もなく、現在の悲惨な社会をもたらすことに大きな力を貸した中谷巌氏の自己批判、自ら過ちを認めたことを大きく評価するスタンスでニュースを構成した意図が分らぬし、許せないのである。
何度も言うが、なぜ、この人物の著書を敢えてとりあげるのか!
変節することで彼はまた学者なり知識人としてのステータスを保つことになる、そのことに天下のNHKがお墨付きをわざわざ与えた今夜の報道にNO!!!を突き付けざるを得ないのである。
この荒廃した社会をもたらした犯人は誰だ!
小泉純一郎、竹中平蔵、そして中谷巌、大田弘子・・・
なんの意図があって、こんな報道をおこなったのか。中谷巌氏が出演したのは、今後の自分の社会的位置取りを決める上で、この上ない好機と見て、欣喜雀躍したに違いないのである。お粗末極まりないぞ、NHK!!!